良寛さんの書「天上大風」(3)

3.秋萩帖は誰が書いたの?
「秋萩帖」は巻頭の「あきはぎのしたばいろづく・・・」の一首の書出しにちなんで、この名で呼ばれています。第一紙は薄藍色の漉き紙に和歌二首を書写しています。

「秋萩帖」を納めた箱の蓋表に「野跡」と霊元天皇(1654〜1732)の筆跡で書かれていることから、江戸時代の中期には小野道風(894〜966)が筆者と伝えられてきました。
第二紙以下は、筆者が異なると推測されています。

草仮名は現在、仮名書道においては使われていない文字もありますので、読みにくいところもあると思われます。
  「安幾破起乃之多以

   都久以来餘理處悲
   東理安留悲東乃
   以袮可転二数流」*①

秋萩帖 伝小野道風 二玄社  祥香臨

草仮名と変体かなの違いは、この後の時代までかなの文字として使われたかどうかによります。例えば、「安」は「あ」として活躍しますし、「幾」も「き」として使っています。一方で「破」は「は」としての用例がこの秋萩帖の他は確かではありません。

平安時代の仮名が隆盛を迎える前の文化の歩みが、よくわかる古筆といえるでしょう。

                 *出典:秋萩帖 二玄社