一読の価値あり、孫過庭「書譜」(5)

5.学は乃ち少にして勉むべし

書譜 孫過庭  台北故宮博物館蔵 二玄社 祥香臨

読み下し文:学の規矩を成すは、老は少に如かず。
      思は即ち老いていよいよ妙なるも、
      学は乃ち少くして勉む可し。
                     出典:「書譜」孫過庭 

大意:「書法を理解する力は少年は老年に及ばない。実習によって書法を体得するのは
   老年より少年がまさっている。思索は老境に入っていよいよ精妙になるが、学習
   は若いうちの努力が肝心である。」
                     出典:「書譜」今井凌雪編

ここでは、粘り強い筆致で、力強く書かれています。とりわけ、三行目の「妙」は左右に
大きく展開してのびやかです。その三字下の「少」の終画は筆を開きながら、方向を調整
して、「妙」の旁との変化をつけています。

「書譜」の特徴の一つに節筆があります。節筆は筆画や連綿の線の途中で用いられる、節のように書線を変化させたものです。これを紙の折り目ととる説もありますが、それも含めて筆者が表現したものとも考えられます。

ともかく、まっすぐな単純な書線にはない迫力が感じられ、引き込まれるところです。
そして内容も、心して書に向き合う力を与えてくれる佳句です。

老いも若きも、共に学ぶこの道には、際限がないのですから。