一読の価値あり、孫過庭「書譜」(4)
4.天地の心に本づく
読み下し文:「豈に情の動きて言に形(あら)わるるは、風騒の意に取会し、陽に舒び陰に惨むは、天地の心に本付くものなるを知らんや。」
出典:「書譜」孫過庭 二玄社
大意:「このような人たちは、人間の情が動いてことばとなり、詩が生まれることや、人間の情懐が天気の良い日にはのびのびと、悪い日には鬱屈するように、結局は天地の心と
結びついていることがわからないのである。」
出典:「書譜」 今井凌雪編
このあたりの書き振りは、筆圧がかかる力強い箇所と、かすれのある渇筆のところが対照的で見応えがあります。特に、「動」の偏の縦画がどっしりと骨格を作っています。
また、「本」や「乎」の渇筆は右隣の「風」と「騒」の行と呼応して印象に残ります。
筆をぐっと開いたかと思うと軽く引き上げ細い線も華やかに、筆者の気分も乗っているようです。
それもそのはずで、交互に対をなす文章は美しく、情景が目の前に広がるような思いがします。なるほど、と膝を打つような気持ちに、臨書をしていても読んでいても、なるくらいですからご本人はいかばかりだったろうと想像します。
ここは、是非とも覚えて、揮毫してみたいオススメの名句です。