もっと読みたい名言の宝庫、書譜(1)

1. 心手相応の境地は一つ

書譜 孫過庭  台北故宮博物館蔵  二玄社  祥香臨

読み下し文:いずくんぞ、心手の会帰は、源を同じうして派をことにするが若く、
      転用の術は、猶お樹を共にして条を分かつが如き者なるを知らんや。
      しかのみならず、吏に・・・
                        出典:「書譜」  孫過庭

大意: 「大体心手相応の境地という根本は一つなので、筆使いの種々相はそれから
    分かれた姿にすぎない。」
                       出典:「書譜」 今井凌雪編

「書譜」には残しておきたい佳言が多く、ご紹介したいものが、まだまだあります。
臨書をして学んでいると、筆法や書法には関心を持って書き進むのですが、内容には
それほど目を向けなくなります。

それでは、もったいないという事で、今井凌雪氏が口語訳を樋口銅牛、田辺萬平両先生
の訳本を参考にされながら、上記の御本に記されました。読んでいきますと、心に響く
言葉が満載でした。

書において、心と手が和合している段階に達した、心境というものの大本は、一つである
とは至言です。「心手」から「会帰」の変化と激しさには、筆者の心情のよくこもった書きぶりです。