一読の価値あり、孫過庭「書譜」(2)

2.心手雙暢(しんしゅそうちょう)

書譜 孫過庭  台北故宮博物館蔵  二玄社     祥香臨

原文:「或重若崩雲。或
    軽如蝉翼。導之則泉注。頓之
    則山安。繊々乎似初月之出
    天涯落々乎猶衆星之列河
    漢同自然之妙有。非力運之
    能成。信可謂智巧兼優。心
    手雙暢翰不虚動。」

大意:(前半略す)巧みな表現は、自然の造化の妙にも通ずる天才であってはじめてできる仕事です。名品の作者は、智恵も技工も兼ねすぐれ、心手雙暢(心と手の両者がのびのびとしている)で、いい加減な書き方をせず、理にかなっているのです。

「繊細なところは、細い月が山の端にかかったような」や「泉」、「天の河」など自然の
中の息を呑むような美しさを、例えとして用いています。

ここでは、「心手雙暢」という言葉に注目します。
心と手が共にのびやかに働けば、書くものは自ずから佳き作品となるということは、書作
する者の願いではないでしょうか。

よく書こうとして意識すると、体が硬くなり緊張してしまうというのはよくあることです。そうしたことも含めて、自然に心と体がのびのびと動くようにしたいものです。

体を楽に使い書作する道を研究し、今後お伝えしていきたいと考えております。