燦然と輝く行書、蘭亭叙(3)

3. 心を自由にして・・・

         蘭亭叙  神龍本  二玄社      祥香臨

日本語訳:「あるいは興を物に託して心を自由にしてこの身あることをも忘れる。
取ると捨てると、或いは進退は種々様々で、静かなると、さわがしきと人々によって
異なるが。

心に通うものを得るに至っては、誰も彼も快然として満足し、年老いるのさえも打ち
忘れる。その心のゆく所にすでに飽いたならば、愉快と思う心も事と共に去り、感慨
(なげき)も生じてくる。」
         参考文献:墨場必携 P970 大文館書店

王羲之の蘭亭の序文は,本人の手による草稿ですが、書ばかりかこの文章がすでに詩文
のようです。この時、羲之はすでに五十の齢を重ねていました。人の心の機微に触れ、
酸いも甘いも噛み分けるような人物だったのでしょう。

しかし、その上で心を自由にして、我が身を忘れると述べていることは、とても感動を
覚えます。そして、心に通うものを得れば老いることも忘れると、何と自由でのびのび
として境地なのだろうかと思います。

それは、書にはっきりと現れていて、見るものと書く者に悦びを与えてくれます。