燦然と輝く行書、蘭亭叙(4)

4.変化に富んだ用筆

蘭亭叙  王羲之  二玄社

日本語訳:「前日に愉快とした物事は僅かに一符一仰の間に過去の古き事となる。
この理を知って感懐を起さぬ者はあるまい。まして長命短命は天地造化にまかせて
終には死してしまう。万人皆かくの如しである。

古人がいう、死生の変はまた大いなりと、豈に痛ましからずや、生死事大の所に感を
起こすことは今も昔も同一で割符を合するが如くよく合っている。孔子の水に対する
なげきに共鳴するばかりであるが、これを心に悟った者はめったにない。

言うまでもなく死生を一と見るは虚・・・」
                    墨場必携 P971 大文館書店 より

一点一画を組み合わせると結構であり、分解してそれを成立させている要素や側面を
明らかにすることが、用筆です。この両者は不可分のものです。

蘭亭叙の中には、「之」が二十以上ありますが、一つとして同じものがありません。
また、二つの「欣」があります。前回のは、横に広がる横勢をとり終筆が開いている
のに対し、今回のは縦に長く、終筆は軽く止めています。

このように、その場に応じた変化に富む用筆が、律動を生み出し、流れるような
光景を見せてくれます。