燦然と輝く行書、蘭亭叙(2)

2. 蘭亭序にみる調和の美

        蘭亭叙    王羲之  二玄社         祥香臨

意味:「多くの人が順序を正して水辺に座を占め、琴ひき笛吹く如き盛大なる会ではなくても、杯をふくんで一篇の詩を作るのはまたもって、墨外の情をのべるに十分である。

今日は天気がよく、春風はそよそよと吹く。仰いでは天地古今の広大なるを見伏しては
桃紅李白、すべての品類の多きをつくづくとみる。二句は蘭亭の景色を見て楽しむさまを
のべる。」
                     「墨場必携」 P971 大文館書店 

上の臨書は、馮承素による摹本(各字の輪郭をとって、濃淡に注意しながら墨をぬる)
で、神龍本とよばれているものからです。
蘭亭叙は、全部で二十八行からなりますが、行間はほぼ同じです。それに対して、字間
の粗密は均等ではありません。

各行の一字と一字の間の距離、大小や広狭がそれぞれ異なっています。そのすべてが、
うまく配置され、ぶつかるところがありません。また、隣り合う行同士も、譲り合い
呼応しています。

王羲之がこの草稿を書いていた時、心がのびやかで滞りがないさまが浮かぶようです。
そして、心のままに筆を運ぶ自然な姿が、そのままに現れて、全体がバランスの取れた
美しさを見せているのです。