燦然と輝く行書、蘭亭叙(1)

     蘭亭叙   神龍本   北京呼吸博物館蔵    祥香臨

1.蘭亭序とは _What is Ranteijo?
王羲之は、東晋のほく帝の永和九年三月三日、会稽山陰の蘭亭において盛大で風雅
な会を催しました。集まった風流人は、東山に再起して天下に名をはせた謝安や高僧
など四十一名でした。

名士たちは曲がりくねった川の両側に分かれ、式を司どる人が酒をついだ杯を浮か
べ、杯が流れついた人は詩を詠む趣向でした。このときの詩集に王羲之が序文を書い
たものが蘭亭叙です。

伝えられるところによると、王羲之は、すでに酔っていましたが筆を下ろすや、
さらさらと仕上げたそうです。さめてから後、自身驚くほどの出来栄えだったとの
ことで、改めて数百本と清書を試みたものの、この草稿を超える書はできなかった
ということです。

王家に代々伝えられていた蘭亭叙を、王羲之の書を非常に愛していた唐の大宗が、
策略をめぐらし手に入れました。それを当時の名だたる書家たち、虞世南、欧陽詢と
褚遂良に臨写させたのです。さらに、馮承素をはじめとする書人に双鉤填墨といって、
まわりをかたどって中を墨で埋めていく技法で模写も命じたのでした。

しかし、真蹟は太宗の命によって、殉葬品として共に埋葬され、我々が今日、目に
できるのは、臨模の書ばかりなのです。
                 参考文献:「蘭亭叙」 余雪曼編 二玄社