心楽しく遊ぶ黄庭経(5)

5.心楽しくの境地
孫家庭の著した「書譜」にこうあります。
『黄庭経則怡嶧虚無』
「黄庭経は即ち虚無に怡嶧(イエキ)し」*
訳:黄庭経は、心楽しく虚無の境地に遊ぶことができる

    黄庭経   二玄社    祥香臨

書の本質を、ことばにあらわすことは難しいでしょう。でも、わかった人は書に
遺すことができます。たとえ、真跡ではなくとも王羲之の刻帖に触れることで、
その奥深さにいざなわれることでしょう。さらに、臨書をすることで、その門に
入ることもできるし、そこで心をのびやかにして遊ぶこともできるのです。

黄庭経は、行き届いた筆意が、すみずみまで感じられ、そのリズムにのせて筆を
動かしていると我をわすれます。そのとき、筆をひたすら動かす喜びにひたれる
のです。

そして、孫家庭はこうも書いています。
「蘭亭興集思逸」 
蘭亭の興集におよびては思いは逸し
訳:蘭亭序にいたっては風流で世塵を忘れ
                  参考文献 * 「書譜」 孫家庭 二玄社

次の回では、蘭亭序の叢に分け入ってみることにしましょう。