読みにくいかな古筆を読んでみる(3)

3.景色 Scene
まずは、景色として眺めることをお勧めします。

すると、一行目の始まりが静かでありながら、中ほどで少し動き、
一行目の後半は、意表を突かれます。『いろよ』までが落ち着いた
出だしです。そして『りも』は左右に動きながら展開していきます。
一行目の後半の『あはれ』で、気持ちの盛り上がりを次の
『おもほゆれ』につなげて行幅を出しています。

一行目だけを見ても、行の幅は、広狭を繰り返していることが、
お分かり頂けると思います。

通常、二行目の上部分が見せ場と言われています。大字の場合は、
渇筆(かすれる)が多いのですが、関戸本は小字なのでここで、
墨をつけたと思われます。

二行目の見せ場は『ふれし』のリズムに乗った連綿(続けて書くこと)
が、後半で密度を増して終わりを告げるところでしょう。

今回は、全体を眺めて準備運動とお考えください。
この目習いも、実際に書く時にはとても大切なこととなります。
日本人の美意識の原点があるように思えるからです。