5.遠い国へ流される人 前回の『文選』からの流れでしょうか。遠い国へ流される人の縁者へ向けて謳われます。　「おほやけの御かしこまりにて遠く行く人、そこそこに昨夜は泊まるなど聞きしかば、そのゆかりある人のもとへ 　ふしなれ […]

4.感極まって お隣の庭で篝火が焚かれ笛の音が聞こえ、かつて宮中での日々をまた思い出した建礼門院右京大夫は、 　「きくからに　いとどむかしの　恋しくて　　庭火の笛の　音にぞ泣くなる」 選字は、「きく可羅耳い登とむ可しのこ […]

3.おとなりの笛の音も 　お隣から聞こえてくる笛の音さえも、作者には懐かし、昔の自分を思い返してしまいます。　「となりに庭火の笛の音するにも、としどし、内侍所に御神楽に、維盛の少将、泰道の中将などのおもしろかりし音ども、 […]

2.遠く聞く宮のおめでた 　心ならずも、宮中を離れた作者は、中宮徳子のお産や皇太子のお祝いを遠くから聞くことしかできません。以前であれば慶びの中にいられたものを、と残念に思い詠んでいます。　　「雲のよそに　きくぞかなしき […]

1.宮のお産など 中宮徳子が二十四歳の治承二年（1178）十一月十二日に言仁親王（安徳天皇）をご出産になります。哀切とともに語られる安徳天皇の短い歴史が始まり、遠くから耳にする作者の姿があります。 　「宮の御産など、めで […]

5.遠いときの彼方へ 恋しく思い出すのは、宮中での琴や笛の演奏です。作者は、琴の名手であったと言われていたのでことのほか、思いが募るのでしょう。 　「をりをりの　その笛竹の　おとたえて　　すさびしことの　行方しられず」 […]

4.思い出の管弦あそび 　宮中での琴を奏したことなどに想いを巡らせます。　「宮にて、つねに近くさぶらふ人の笛にあはせなど遊びしこと、いみじう恋し。」 選字は、「宮爾弖徒年二ち可佐ふら　　　　　布人のふえにあ者せなと遊ひし […]

3.琴にはちりがつもり 　何かにつけて、楽しかった宮中でのでき事などを思い出してしまいます。　「その頃、塵積もりたる琴を、『弾かで多くの月日経にけり』と見るもあはれにて」 選字は、「所のこ路遅利徒もりたる琴をひ可て　　　 […]

2.中宮さまはうるわしく 中宮さまの面影が目に浮か美、懐かしさで胸がいっぱいになっていく作者は、　「『あさましく、かくてもへにけり』とかきくらし恋しく思ひまゐらせて、 　　　　恋わぶる　心をやみに　くらさせて　　　　秋の […]

1.心ならずも 　作者の右京大夫は、自分の気持ちからではなく宮仕えを退くことになったのですが、そのわけには様々な説があります。一説には、資盛との恋が人の葉に上り居ずらくなったとか、また母の夕霧の看病のためであった、などと […]