何にでも書いてしまう良寛さん(3)

3. お釈迦さまのことば
お釈迦さまは、「前には/放逸なりし人も/やがて後に/励み深き人は/まこと雲を離れたる/
月のごとく/この世間を照さん」(発句経・172)

自分が救われるだけでなく、世を照らす人にもなりうる、という教えです。*①

良寛さんは、自他の別なくありのままに過ごした方であったと思われる逸話が残っています。
ある時、月があまりに美しいので、月に誘われるようにして歩いていて、気がついたら、知らない人の畑に入っていました。畑の持ち主が怒って、警官を呼び警棒で良寛さん

を大変に打ったのです。その間良寛さんはただ打たれるがままにまかせ、言い逃れもしなかったというのです。ようやく良寛さんに気がついた村の人に止められたものの、良寛さんはただ、打たれたところをさすって痛いなあとだけ言い、誰一人を責めるわけでもなかった、というお話です。

その時だけを生きるということは、自も他もないのです。それをまさにに実践されていたわけです。たいてい人は、他のことが気にかかったり、なんでこんな目に合うのだろうかと考えたりします。でも良寛さんはそういうことを問題にしないのです。