「月よみの光を・・」良寛の和歌(2)
2. 良寛の思いやり
前回の歌に続いて、良寛が詠んだのが。上の和歌です。
「月よみの光を待ちて帰りませ山路は栗のいがの*おつれば」(*しげきに)
国上山の西麓渡部(新潟県西蒲原郡分水町大字渡部)の庄屋役を勤めた阿部家に伝わる書巻を見ると、この歌は結句が「おつれば」となっています。良寛禅師歌集によると「しげきに」となっていて、こちらの方がよく知られているかもしれません。
直後に、「心あらば草の庵にとまりませ苔の衣はいと狭くとも」
が良寛歌集に並んでいることから、ともに歓談の時を過ごした親友阿部定珍の姿が浮かんできます。
「月よみ」とは、日本書記巻一・神代上などに「月の神」とされ、転じて月の意味を表しています。日本の神話の世界を思わせる夢のある言葉、巧みな倒置法の三句切れの会話的発想も優美です。閑雅な山の生活を背景に、月の光・山路・栗のいが、のことばが眼前にイメージとして複層的に広がります。
友を少しでも長くとどめたい気持ちと、相手の足元を気遣う様子がわかり、良寛の温かいやさしさが偲ばれる歌です。
参考文献:和歌の解釈と鑑賞事典 井上宗雄他編