良寛の書、一行物は茶掛になる(4)
4. もう一度、墨跡の内容について
墨跡というものは、どういう内容があるのでしょうか。
法語:文字通り仏法語であるが、禅家独特の内容構成で、自己の極意を弟子、或いは同僚に披瀝したもので、墨跡としても真形を為すものです。
偈頌:内容は法語とも類似するが、語句を五言律の韻文体で表現し、何らかの機縁に提上する場合が多い。また古徳の偈をそのまま書したものもある。なおこれに対し法語の方は、散文体をとっています。
印可状:禅家においては、弟子に法を嗣がせることが極めて重要です。この意味で、印可状もまた師匠がしばらく我が意を体し得たとして、その弟子に授ける証書であるから、墨跡中でも重きをなしていることは言うまでもありません。なお字号・道号が印可の意を課すことも多いです。
字号・道号:前述の如く、師が多くの弟子の中から特に選んで字号を与える場合は、印可の意を含んでいることも多いので、決して軽々しいものではありません。本来はこの墨跡
なるものは、これを貰った人に意味のあるものであったが、今日茶席の床に掛けられる意義は、その号の語を通じて禅の真髄に触れようとするものであり、いずれにしても、故人の余徳を拝することに変わりはないのです。
遺偈:禅僧が入寂の前に書き遺す偈で、禅家特有のものです。これを拝する人の心に直接響くものを持っていることが多いです。
尺牘:手紙ですが、多くは内容に法語を交えたり含蓄のある文章です。*①
他にも、詩書、題字などがあります。
良寛の書かれた幅は、詩書にあたるかと思われます。
*出典:① 茶の掛物 千宗室監修