良寛の書、一行物は茶掛になる(5)

5.例えば、虚堂智愚禅師の偈

虚堂智愚墨跡 偈語 畠山記念館蔵   祥香臨

虚堂智愚(1185〜1269)は、南宋末期、臨済宗の僧で四明象山の方です。十六歳で出家、運庵普厳に参じてその法を嗣ぎました。その会下から多くの法嗣が輩出し、南浦紹明

もその一人で、法系が宗峰妙超を経て、大徳寺・妙心寺と栄え、日本臨済宗の本宗となっています。虚堂は臨済正宗の仏祖として崇められ、その墨跡は茶人の間で特に珍重されました。

この墨跡は、求道してきた閲禅人に与えたものです。*①
「善応無方」の趣旨を諭していますが、一定の法則に拘泥せず無碍自在に働くと言う自己を、雨が降ったり止んだりする晩秋落葉の風景に託しながら示しています。

また、墨跡で見逃すことができないのは表装です。古筆は、近年に表装されたものが多いのですが、墨跡は早くから尊重されてきただけあって上質なものが多いのです。印金、金襴、上代紗など、いずれも注目に値するものです。

上記の虚堂智愚墨跡の偈語の表装は、、一文字・風帯は納戸地撫子唐草文上代金紗、中廻は柴地二重蔦中牡丹文印金、上下は松葉細絓です。*②
是非、畠山記念館で実際にご覧になることをお勧めします。

           *出典:① ,② 與衆愛玩 畠山即翁の美の世界 2011