こんな時こそ「愛語」(4)
4.修行の心構えとは?
修行にどのような心構えで臨めばよいのか、を示したのが「菩提薩埵四摂法」の巻です。
ここで道元は、出家者も在家者も含め、歩み続ける者(=菩提)が実践すべき四つの徳目を挙げています。
それが、布施・愛語・利行・同時の四つです。
「布施」
お布施というと、人にものを施すことと考えますが、道元は異なります。
「その布施といふは不貪なり。不貪といふは、むさぼらざるなり。
むさぼらずといふは、よのなかにいふへつらはざるなり。」*①
布施とは人に施すことではなく、自らがむさぼらないこと、欲深く物を欲しがらないことだというのです。そして、それは世の中に媚びへつらわないことなのです。
人の気に入るようにふるまったり、おもねる行いをしないことは、自分が得をしたいという気持ちを手放すということです。布施とは、人に対する行いというよりは、自らのふるまいについて述べています。
「利行」
利行とは、全ての人のためになる行いをすることです。道元禅師は
「利行は一法なり」
と言われます。道元は、「自分」と「他人」を分けず、「自他不二」なのです。自分と他人の区別というのは、人の考え方から生まれるもので、もともとは全て同じだからです。
最後は、「同時」です。
「同時といふは、不違なり。自にも不違なり、他にも不違なり。」*①
これは、自分も相手も違いがないということです。同じいのちなのだから、相手の立場に立つことができるのです。
*出典:①正法眼蔵 道元 ひろさちや
参考文献: 禅の友 2018年1月号