ほんの少しぬれただけ、手枕の袖を(5)和泉式部日記から

5.ほんの夢のような
釈文:「ときこえたり。忘れじ、と言ひつるを、をかし、とおぼして、『夢ばかり涙にぬると見つらめど ふしぞわづらふ手枕の袖』」

選字は「ときこ江多利忘れし登言ひ川る越ヽか志とお本事弖
夢盤可り涙爾ぬ類と見徒らめ登 布志曽利川ら婦手枕農袖」

鑑賞:「忘れじ」は前出の「手枕の袖忘れ侍るをりや侍る」のこと。

歌意は「ほんの夢ほどの涙に濡れたとお思いかもしれないが、こちらには寝れないほど袖が濡れてしまったのです。」

参考文献:和泉式部日記 和泉式部集 野村精一校注 新潮社