初夏の暁、更衣の日に(3)和漢朗詠集より

3.せっかく桜色に染めたのに

釈文:「花の色にそめしたもとの惜しければ 衣かへうき今日にもあるかな」

選字は「者那のいろ爾所めしたもとのを志介 連盤ころも可へう支今日爾もある可奈」

鑑賞:『拾遺集』夏に「冷泉院の東宮におはしましける時百首歌たてまつれとおほせられければ 源重之」『拾遺抄』夏に「帯刀長 源重之」として出典。

「花の色にそめし」桜がさねの衣。表白く裏あさぎ。紅の単、紅梅のうわぎ、蘇芳の小袖。

現代語にすると「今日からは夏の薄衣に衣替えをせねばならないが、桜色に染めた春の衣を脱ぐのが惜しく、気が重い。」

参考文献:和漢朗詠集 川口久雄訳注 講談社学術文庫