芭蕉自筆、奥の細道を読み書こう(2)
2.芭蕉、出立の日
芭蕉は、元禄二年三月二十七日、陽暦では1689年5月16日にあたる日の早朝、深川の庵から旅立ちました。見送る門人は多くなく「むつましきかぎりは、宵よりつどいて」と、本文にあります。
千住で舟から上がり待ち受けていただろう曽良と合流し、見送りの人々へ別れを告げ奥州へ向かいました。 出典:自筆芭蕉 「奥の細道」 岩波書店
行く春を惜しむ気持ちは、昔から変わらずあるようです。
芭蕉は西行を慕っていたと思われることから、ここでは平安時代の三十六歌仙の一人、
中務(生没年未詳)の歌集で西行筆と伝えられている「中務集」をご紹介します。
こちらは、「中務集」の冒頭です。後ろから四行めより、
「はなをおしむところ
ふぢのはなさくをみすて〃
ゆくはるはうしろめたくや お
ぼえざるらん」
伝西行筆とされるのは、西行の自筆とされる「一品経和歌懐紙」(京都民芸館蔵)、書状(金剛峯寺蔵)「宝簡集」や、かな消息(宮内庁蔵)と比べて類似する書風であることからです。
次回は、書風をさらにみて芭蕉の句との対比も試みましょう