旧暦三月三日桃を付して口ずさむ(7)和漢朗詠集から

7.夜間に降った雨が

釈文:「夜雨偸濕 曽波之眼新嬌。暁風緩吹 不言之口先咲。」

書き下し文は「夜の雨偸(ひそ)かに濕(うるほ)して曽波の眼新たに嬌(こ)びたり 暁の風緩く吹いて 不言の口先づ咲めり」

鑑賞:「曽波之眼」「曽波」は波が重なること。眼がはっきりしていて、花びらの重なりのように見えること。一説に美人の二重まぶた。

「不言之口」『史記』李将軍列伝の「桃李もの言はざれども、下自ら蹊を成す」による。

現代語にすると「夜間に降った春の雨が桃を潤して、新たにつぼみを開かせる。あたかも美人が眼を開いて媚を示したようだ。暁の風がゆったりと吹き、開いたばかりの花をふるわすのは、美人が何も言わずに微笑みかけたようだ。」

参考文献:和漢朗詠集 川口久雄訳注 講談社学術文庫