もっと読みたい名言の宝庫、書譜(4)
4.精神が飛動する
書が爽やかで、心が飛び動くような作品となるとは、どういうことかを述ベています。
読み下し文:いやしくもその術を知らば、まさに兼ね通ず可し。心は精を厭わず、手は
孰するを忘れず。もし運用は精熱を尽くし、規矩は胸襟にそらんずれば、
自然に容与徘徊し、意は先んじ筆は後に、しょうさい流落して、ふでは
逸し神(こころ)は飛せん。
出典:「書譜」 孫過庭
大意:「その因果関係や表現技法を会得すれば兼通自在となる。だから心が精密に働き、
手は熟練するよう努力したいものである。心手が精熟しきって、書法を体得した
ならば、自ら筆は悠々と動き、意先筆後、さっぱりとさわやかに書け、精神の飛動
した作品ができる。」
出典:「書譜」今井凌雪編
この文章の前段に、「運筆表現の根源は自己の内面にあって、それが筆跡となって紙上に
定着する。」とあります。心にわだかまりがある時は、屈託のない字は書けないことでしょう。
やはり、心と手が一つに溶け合って、作品ができるときに素晴らしい書となると思います。それは、たゆまぬ精進によって導かれるのでしょう。