夢よりもはかないあの方との間を(2)和泉式部日記を書いて
2.和泉式部日記とは
『和泉式部日記』には作者自身の手による直筆本は残されていない。『日記』といえば、本人の実際の出来事が大半を占めているだろうと推測されてしまう。だが、かつては『和泉式部物語』という呼び名の方が一般的であった。
また、現在では三条西家本が主流であるが、わずか前に、『群書類従』本を用いて与謝野晶子・鉄幹編による『和泉式部全集』が刊行された。与謝野晶子は和泉式部を高く評価し、奔放な情熱歌人として紹介した。
和泉式部に近代のロマン派的感覚を読み込んだ。その浪漫派の思想が「日記」を「日記文学」、『和泉式部物語』を『和泉式部日記』として昇華させたのであった。
ロマン派とは19世紀初めヨーロッパ革命後に展開された文学上・芸術上の思潮で、ブルジョアの俗物性に抗し、異郷や過去にユートピアを求めた。個性・空想・形式の自由を強調した。日本では明治中期の『文学界』・明星派・スバル派などに展開した。
参考文献:和泉式部日記 和泉式部集 野村精一校注 新潮社