有明の月、雲までも平通宗を思い出し(5)建礼門院右京大夫集を書いて
5.朝の光の中で
釈文:「露ときえ 煙ともなる 人はなほ はかなきあとを ながめもすらむ」
選字は「露ときえ煙登毛なる人者奈ほ盤可 奈記あとを那可免も寸羅無」
歌意は「はかなく露が消えるように立ち昇る煙になってしまった。人は寿命が尽きて亡くなれば、空に上がる煙を形見として眺めることもできるでしょう。」
鑑賞:荼毘に付した煙が空に上るのを見て懐かしく思うこともできるだろうが、作者にはそれもできず何を形見としようか、と自問する。
参考文献:建礼門院右京大夫集 糸賀きみ江校注 新潮社