父君を亡くされた平親長と贈答歌を(2)建礼門院右京大夫集より

2.空もしぐれて

釈文:「空のけしきもうちしぐれて、さまざまのあはれも、ことにしのびがたければ、色なる人の袖のうへも推しはかられて」

選字は「空農希志支毛う遅事供連て 佐まさ万能あ者れ裳こ登二しの 飛可多け連者色なる人農袖のう 遍もおしは可られて」

鑑賞:「色」衣の色。ここでは喪服の鈍色。薄黒色、濃い鼠色。『源氏物語』(若紫)「鈍色のこまやかなるが」とある。

現代語にすると「空の景色も時雨がかって、しみじみとかなしくて、とりわけ耐え難く思われるので、喪中の方の袖も涙で濡れてしまうだろうと推しはかられて」

参考文献:建礼門院右京大夫集 糸賀きみ江校注 新潮社