今年が最後の七夕の歌かと思ひ(2)建礼門院右京大夫集より

2.篠に引いた糸で

釈文:「引く糸の ただ一すぢに 恋ひ恋ひて こよひ逢ふ瀬も うらやまれつつ」

選字は「引久い登能多ヽ一春千爾恋ひヽヽ弖 こ餘日逢布せもう羅や万連つヽ」

鑑賞:「引く糸の」は七夕に供えるために篠にかけ引いた五色の糸で「ただ一すぢ」を導くための序。「恋ひ恋ひて」は「こ」音を繰り返す用法である。

例として『古今和歌集』秋上・よみ人しらず「恋ひ恋ひて逢ふ夜はこよひ天の川霧たちわたりあけずもあらむ」がある。ずっと恋してきた織女の気持ちになり、霧が立ち込めて夜が明けないでおくれ、と詠んでいる。

参考文献:建礼門院右京大夫集 糸賀きみ江校注 新潮社