秋の野辺にもまさる涙の羽衣(6)建礼門院右京大夫集から
6.これほど早く夜が
釈文:「彦星の 思ふ心は 夜ぶかくて いかにあけぬる 天の戸ならむ」
選字は「彦星の於も布心者夜ふ可久てい可二 阿介ぬるあ満農登奈ら無」
鑑賞:「あけぬる天の戸」は天の岩戸が開くと夜が明けると考えられていた。ここでは「あ」の音が韻を踏むようにリズムがよい。一方で書くときは同じ文字では単調になるので、「阿」と「あ」を用いて変化をつけ、字幅の広狭も表している。
歌意は「彦星はまだ夜が深くて逢瀬の時があるように感じているのになぜこんなに早く夜が明けてしまうのかと思っていることだろう。」
参考文献:建礼門院右京大夫集 糸賀きみ江校注 新潮社