弥生の頃、資盛の命日に(3)建礼門院右京大夫集より
3.どうしましょう
釈文:「いかにせむ 我がのちの世は さてもなほ
むかしの今日を とふ人もがな」
選字は「以可耳勢無わ可能遅の世八佐て毛奈
ほ無可しの計不越と布人裳
可那」
歌意は「どうしよう 私の後の世はどのようになってもかまわないけれど、昔大切に思っていた資盛様の命日を弔ってくれう人がいればいいのに。」
鑑賞:『玉葉集』雑四に入集されている。「後世」は「後生善処」の意味もあり、来世には極楽や天界に生まれ変わること。思いがけず、壮絶な死を迎えた資盛のことを口にすることもはばかられ、弔う人もいない。自分より資盛のことを気にかける作者の心根が切ない。
参考文献:建礼門院右京大夫集 糸賀きみ江校注 新潮社