「蓮」の詩歌を臨書する(7)和漢朗詠集から
7.蓮葉は泥田にあって
釈文:「はちす葉のにごりそまぬこヽろもて
などかは露を珠とあざむく」
選字は「者ちす者のにこり所万ぬこヽろも
てなと可はつゆをたまとあさむ久」
鑑賞:平易な仮名を多く用いて、ゆったりとやわらかい書きぶりである。その中で「す」の横角は左へ大きくはり出して字幅の変化をもたらしている。
「にごりそまぬこヽろ」は『法華経』に「世間の法に染まらざること、蓮華の水に在るがごとし」による。
「珠とあざむく」『白氏文集』十五、「荷(はちす)の露は団(まろ)なりといへども豈にこれ珠ならんや」
現代語にすると「蓮は泥田に生えているのに濁りに染まらない清らかな心を持っていながら、どうして葉の上の露を珠と見せて人を欺くのだろう。」
『古今和歌集』夏に「はちすの露を見てよめる 僧正遍昭 はちすはのにごりしまぬこヽろもてなにかは露を玉とあざむく」とある。
参考文献:和漢朗詠集 川口久雄訳注 講談社学術文庫