続・前赤壁賦を臨書して(3)蘇軾の意を読む

3.はかない命を

釈文:「駕一葉之扁
    舟、擧匏尊以相屬寄蜉
    蝣於天地眇滄海之一粟」

書き下し文は「一葉の扁舟に駕し、匏樽を擧(あ)げて以て相い屬し、蜉蝣を天地に寄す、眇(びょう)たる滄海の一粟なるをや。」

鑑賞:「尊」は本文に缶偏がある。たっぷりと墨を継ぎ、字の点画同士の緊密さには余裕が感じられる。「之」や「以」など小ぶりの字を配しながら、統一感がある。

現代語にすると、「小舟に乗って酒つぼから酌み交わしながら、カゲロウのようにはかない命をこの天地に寄せ、果てしない青海原の中の一粒のあわのような身でしょう。」

参考文献:漢詩と名蹟 鷲野正明著 二玄社