続・蘇軾にみる精神性(5)黄州寒食詩巻(其のニ)より

5.天子のいる門は

黄州寒食詩巻 蘇軾筆 祥香臨

釈文:「君門深九重
    墳墓在萬里」

書き下し文は「君門 深きこと九重
       墳墓 萬里に在り」

現代語にすると「天子のおられる朝廷の門は九重もあり、とても深い。祖先の墓は遠く彼方にある。

解説:「君門深九重」天子のおられる門の深さから、作者が朝廷に復帰したいけれども、望みが叶えがたいことをいう。

「墳墓在萬里」蘇家のはかは蜀の眉州彭山県にあり、故郷は遠くて帰りがたいことをいう。

鑑賞:「九」は力強く左行に働きかけ、右行の渇筆と対照的である。

参考文献:漢詩と名蹟 鷲野正明著 二玄社