初めて見そめたような星月夜(7)建礼門院右京大夫集から

7.見上げた星空は

建礼門院右京大夫集 祥香書

ここでは、作者が詞書で星空を「花の紙に箔をうち散らしたるように似たり」とたとえたことに注目します。

作者の父伊行は三蹟の一人である行成のお六代の孫で、「葦手絵
和漢朗詠抄」(国宝)などが残る能筆家でした。兄弟の伊経も俊成が奉覧した『千載集』の外題を書くなどの能筆です。

書の家である、世尊家の生まれであったことから、星空を眺めてこのような表現となったと考えられます。

当時、薄い藍色に、金か銀の箔(切箔・砂子)を散らした料紙は
和歌や経典を書写するのに用いられていました。

また、都を離れた旅先で心が澄み渡り、元来の美的感性がよみえったことで生まれた一首といえましょう。

 参考文献:和歌の解釈と鑑賞事典 井上宗雄他編 笠間書院