資盛の邸跡に虫の声が(2)建礼門院右京大夫集から

2.今も残る梢に

建礼門院右京大夫集 祥香書

釈文:「植ゑて見し 人はかれぬる 跡になほ
    のこるこずゑを見るも露けし」

選字は「植ゑて見し人盤可れぬる跡爾奈ほ
    乃こるこ春ゑを美るも露布志」

歌意は「共に植えた人はすでに亡く、あとにはなお残っている梢を見るのも
    悲しくて涙にくれます。」

鑑賞:「かれ」は「離(か)れる」と「枯れる」をかけています。
   「露けし」は水分の多い状態で、多くは涙にかけて詠みます。
   「植ゑ」「こずゑ」「露けし」は縁語。

 参考文献:建礼門院右京大夫集 糸賀きみ江校注 新潮社