資盛を弔い源氏物語を思い出して(6)建礼門院右京大夫集を書く
6.あの人の筆の跡は
「かなしさの いとどもよほす 水茎の
跡はなかなか 消えぬとぞ思ふ」
選字は、「か那しさのいとヽ裳よほ春水茎の
阿と盤奈可ヽヽ消えねと曽思布」
歌意は、「目にすると、かなしさを何度も誘う、あの人の筆の跡はいっそのこと消えて
しまってほしいとさえ思うことです。」
鑑賞:「水茎の跡」は筆跡のことですが、「書画は人なり」の言葉がありますように、
書き振りにはその人となりがでるものです。ふっと浮かび上がる在りし日の
資盛を見るようでつらくなり、いっそ消えて欲しいと思う作者です。
参考文献:建礼門院右京大夫集 糸賀きみ江校注 新潮社