資盛を弔い源氏物語を思い出して(3)建礼門院右京大夫集を書く

3.涙で目の前が

建礼門院右京大夫集 祥香書

かつて資盛からいただいた手紙の筆跡や言葉が見るまいとしても目に入ってつらくなり
ます。
八行目から「昔のあとは涙のかかるならひなるを、目もくれ心も消えつつ、いはぬかた
      なし。そのをり、とありし、かかりし、我がいひしことのあひしらひ」

選字は、「昔の阿と八涙の可ヽ流奈らひ奈
     る越目もくれ心裳きえ徒ヽい者無(ぬ)可

     た奈し處農越りとあ利志可ヽ梨
     し我可い日志ことの阿ひし羅飛」

大意は、「涙で目の前が暗くなり、言いようがありません。その時、ああだった、こう
     だった、私の言ったことへの返事」
さながら揺れ戻す籠のように、懐かしさとかなしさが入り混じった感情が込み上げてい
ます。

 参考文献:建礼門院右京大夫集 糸賀きみ江校注 新潮社