あなたと私が同じ世にいることは(2)建礼門院右京大夫集を書きながら
2.生きているのに
資盛に確かな伝手を頼って送った歌三首のうちの二首目、
「同じ世と なほ思ふこそ かなしけれ
あるがあるにも あらぬこの世に」
選字は、「於奈し世と那本思布こ所可な志
介れある駕あ類二も阿らぬこのよに」
歌意は、「あなたとは同じ世に生きていると思うからこそ悲しいのです。生きていても
生きていることにならないこの世の中に。」
鑑賞:「あるがあるにもあらぬ」作者の歌には繰り返し同じ言葉を用いるという特徴が
あります。ここでも、畳み掛けるように、「ある」を使うことで気の滅入る、
やるせない思いが表されています。
参考文献:建礼門院右京大夫集 糸賀きみ江校注 新潮社