花の姿と熊野の波(2)建礼門院右京大夫集を書いて
2.おなじことと思へ
作者は維盛から恋人の資盛と同じに思いなさい、と言われていました。
「『おなじことと思へ』と、おりおりいはれしを、『さこそ』といらへしか
ば『されどさやはある』といはれしことなど、かずかずかなしともいふ
ばかりなし。」
選字は、「お難しこ登ヽ思倍とを里越り者い
盤連事越沙こ所い者れ志可盤
散れとさや盤阿るとい者連し故と
奈登可須ヽヽか奈しと裳い布八可
梨奈し」
意味は、「『維盛からときどき資盛と同じに思いなさい』と言われ、『そう思っております』と答えると、『本当にそう思っているのか、そうではないだろう』と言われたことなど、色々と悲しくて言いようがないことばかりです。」
作者は思い人の資盛となかなか会えず、気を揉んでいまいしたが、これ森はそのことをご存知であったのか、からかいとも本気ともつかないことを伝えていたのです。
参考文献:建礼門院右京大夫集 糸賀きみ江校注 新潮社