湯治へ来た友へ歌を贈る(7)建礼門院右京大夫集から
7.贈り物はないというけれど
「心ざし なしはさりとも わがために
あるらむものを 秋のやまざと」
選字は、「心佐志奈しはさ利度も王か多免二
阿る羅無裳のをあき乃や万沙と」
歌意は、贈り物はないというけれど、私のために梨くらいはあるでしょう。秋の
山里には。
「このごろは 柑子橘 なりまじり
木の葉もみづや 秋のやまざと」
選字は、「この故ろ者柑子多遅は奈ヽ里満四利
木の葉もみ徒やあ支の山佐と」
歌意は、この頃は、柑子みかんや橘が実り混ざって紅葉も美しいことでしょう。
秋の山里では。
鑑賞:「橘」ミカン科ミカン属の常緑小高木で柑橘類の一種。日本固有種で、果実は
秋から冬に黄色に熟し直径3cmほど。
「もみづ」草木の葉が紅葉・黄葉する動詞。平安時代以降に濁音化し、上二段活用。
参考文献:建礼門院右京大夫集 糸賀きみ江校注 新潮社