三色紙の真打、升色紙の登場(1)

1.升色紙とは? What is Masusikisi?

東京国立博物館蔵  祥香臨

升色紙とは、寸松庵色紙、継色紙と並び称される古筆切の名称です。
升色紙は、元が枡形の冊子本であったか、もしくは切断した際に料紙が
升形であったことが名称の由来と考えられます。

清原深養父(ふかやぶ)の歌集「深養父集」を書写した断簡で、藤原
行成筆と伝承されていますが、確証はありません。

行成より時代が下がった十一世紀後半の能書家によるものと思われます。
紙は鳥の子の素紙にわずかに微細な雲母砂子を撒いたものです。

書法は流麗なだけでなく、散らし書きは個性的であり、工夫が凝らされ
ています。他の色紙とは全く異なる特徴を持つ稀有な古筆であると言え
ます。