三色紙の真打、升式紙の登場(2)

2.升色紙の書風  The Style of Masusikisi

                                  祥香臨

なんと言っても墨の入った潤筆と細線の対比が印象的です。
そして、からみ合った後半部分は、遠近を感じるほどであり他の古筆に例を見ません。

よほどの能筆家があらかじめ意図を決めて、迷いなく書き進めたものと思われます。
意先筆後という言葉のとおり、意が先にあり、筆は後からついて来るという状態で
あったのでしょう。

このように筆を沈め、また引き上げて筆鋒を使いながら、滞りなく運筆することは
至難の技であります。いかに、この時代の筆技が優れていたかと感心すると共に、
こうした色紙を美しいと感じ、後の世まで残してきた先人の美意識に敬意を表したい
と思います。

私たち現代人は、ともすると活字のように真っ直ぐで整った文字を、美しいと感じ
る傾向にあります。しかし本来、文字は、より自由で感性に訴える力を持ち、芸術性に
富んだ造形であることを古筆切から学ぶのです。