しのぶ恋の始まりは、資盛への思い（1）建礼門院右京大夫集を書いて

1.恋の初めの頃は

前の歌で前世の約束にはどうしてもあらがえないものだ、と嘆息まじりに詠っていました。かつての恋のはじまりを思い出しています。
　「はじめつかたは、なべてあることともおぼえず、いみじう物のつつましくて、あさゆふみかはすかたへの人々も、まして男たちも、知られなばいかにとのみかなしくおぼえしかば、手習ひにせられしは」

選字は、「者し免徒多盤なへ弖あ流
　　　　　こ登毛於本え須いみしうも能ヽ
　　　　　徒ヽま志久亭あ佐ゆ布見可は春
　
　　　　　か多倍の人々もまして男たち毛
　　　　　志られ奈八意可にとの三か那し久
　　　　　おほえし可者なら飛爾せら
　　　　　連四盤」

大意は、資盛との恋が始まった頃は、全てのことが恥ずかしくて朝夕と顔を合わせる女房たちに、まして男たちにも二人の仲を知られたら、何と思うだろうと考えてばかりで、手習に思い浮かぶままに書いた歌です。

しのぶ恋のつらさが、伝わってきます。
　参考文献：建礼門院右京大夫集　糸賀きみ江校注　新潮社