宮仕へがなつかしく(3)建礼門院右京大夫集を書いて
3.琴にはちりがつもり
何かにつけて、楽しかった宮中でのでき事などを思い出してしまいます。
「その頃、塵積もりたる琴を、『弾かで多くの月日経にけり』と見るもあはれにて」
選字は、「所のこ路遅利徒もりたる琴をひ可て
多くの月日経爾希利と見流毛あ者
礼耳て」
ちょうどその頃に、室内に置かれたままの琴が目に入ります。見れば、塵が積もり、随分と弾かないで月日が流れてしまったのだなと、しみじみと寂しさが、わき起こるのです。
月を見れば、中宮様の艶やかさを思い出し、琴を見れば月日の流れを感じる作者です。
参考文献:建礼門院右京大夫集 糸賀きみ江校注 新潮社