宮仕へがなつかしく(1)建礼門院右京大夫集を書いて

1.心ならずも

建礼門院右京大夫集 祥香書

 作者の右京大夫は、自分の気持ちからではなく宮仕えを退くことになったのですが、そのわけには様々な説があります。一説には、資盛との恋が人の葉に上り居ずらくなったとか、また母の夕霧の看病のためであった、などと言われています。

 「心ならず宮にまゐらずなりにし頃、れいの月をながめて明かすに、見てもあかざりし御おもかげの

選字は、「こヽ路なら須三や爾まゐ羅寸な利爾
     しころれい農月を那可免弖あ可寸
     に見teもあ可佐利し御於毛可希の」

作者は、意に染まない形で宮中を去ることになりました。いつもの通り月を眺めていましたが、中宮様のお美しい面影を思い出し、いつ拝見しても見飽きることがなかったことだ、としのばれます。

 参考文献:建礼門院右京大夫集 糸賀きみ江校注 新潮社