涙の露ぞ(5)建礼門院右京大夫集
5.枕元には
釈文:「とまるらぬ 古き枕に塵はゐて
はらはぬ床を 思ひこそやれ」
選字は、「度ま流ら無ふる幾ま九羅
耳遅利者井て盤らはぬ
とこ越おも日故處や連」
歌意は、ご主人の、お元気な頃のまま枕に塵が積もり、払おうとなさらないお床の様子をお察ししております。
源氏物語『長恨歌』によって悲しみを述べた葵の巻、光源氏の歌「亡き魂ぞいとど悲しき寝し床のあくがれがたき心のならひに」の影響が見られる。*①
積もった悲しみが塵と重なり、時の経過を無常に物語っています。
出典:*① 建礼門院右京大夫集 糸賀きみ江校注 新潮社