亡き父の筆跡を見て(2)建礼門院右京大夫集
2.水ぐきの跡
亡き父の筆跡を偲んで読んだ歌が、
「めぐりきて 見るにたもとをぬらすかな
絵島にとめし 水ぐきの跡」
用字は、「め久理き弖見流璽多毛度を
努羅す可奈ゑじまに登免
しみ徒久起のあと」
歌意は、巡りめぐってたどり着いた今は亡き父の筆跡に、懐かしくて涙がこぼれてしまうわ。
淡路島の絵島を描いた絵を讃える父の筆の跡よ。
見れば父のものとすぐに分かる、それほどの能書に接した時の喜びと切なさが表れています。
書は、人なりと申します。お父様が身近に感じられた瞬間であったのでしょう。
参考文献:建礼門院右京大夫集 新潮社