亡き父の筆跡を見て(1)建礼門院右京大夫集

1.作者の父は能書家

建礼門院右京大夫集  祥香書

作者の父、世尊寺伊行は能書家で知られ、三蹟の一人藤原行成の六代の後裔にあたります。その父が画讃などを書いた絵が、回り回って見る機会があった時のお話です。

 「太皇太后宮より、おもしろき絵どもを、中宮の御方へまゐらせさせ給ヘリしなかに、昔、ててのもとに人の手習比して、ことばかかかせし絵のまじりたる、いとあはれにて、」

用字を「太皇太后宮よ利於いて毛しろ支ゑ
    登裳を中宮の御方へまゐらせ
    多ま遍り志な閑耳無か志てヽ

    の毛度璽人農手習ひし天こと八
    かヽ勢志衛のまし里多流いとあ盤
    れ耳て」

太皇太后宮、(近衛天皇の皇后多子)より中宮様へ趣のある絵などを差し上げた中に以前、亡父が頼まれて書いた画讃があ利ました。しみじみと懐かしい父の筆跡を眺める建礼門院右京大夫でした。

 参考文献:建礼門院右京大夫集 新潮社