恋などするまいと思っていたのに(5)建礼門院右京大夫集
5.私の心もくもりがち
実家に戻って、ぼんやりこずえを眺めていると、弱々しい夕日と時雨を見て、すっかり気持ちが沈んでしまった建礼門院右京大夫が詠んだ歌が、
「夕日うつるこずゑの色のしぐるるに
心もやがて かきくらすかな」
用字は、「夕日う徒るこ春衛の色農し九
流ゝ耳こゝ楼毛や可てか支く羅寸
可奈」
現代語にすると、「夕日の色が薄くなって、梢に映っているのを見ると
私の心もだんだんと暗く曇っていくのです」
作者の心が、投影した光景のような、憂いを含んだ歌となっています。
参考文献:建礼門院右京大夫集 新潮社