道元の自然とは、和歌から(2)
2.東坡居士の偈
ここで、道元禅師の歌のきっかけとなったのではないかと思われる東坡居士の漢詩を「正法眼蔵」からご紹介します。「正法眼蔵 谿聲山色」の巻が制作され、示されたのは、延応二年(1240)の夏安居が始まった時、興聖宝林寺においてのことです。
東坡居士、蘇軾はあるとき廬山にいたれりしちなみに、谿水の夜流する声をきくに悟道す。偈をつくりて常総禅師に呈するにいはく。
谿聲便是広長舌
山色無非清浄身
夜来八方四千偈
他日如何挙似人
意訳:谿の声はそのまま仏の説法にして
山の姿は清らかな仏身に他ならぬ
夜半にききえたる八方四千偈
さていかが人に語ればよいものか *①
この巻で、道元が伝えようとしていることは、仏教において悟りを開くまさにそのときについてです。おそらく、仏道を志す人々の関心事であることは間違いがないでしょう。
それを、ふまえて道元禅師が語っていることは貴重です。
*出典:①正法眼蔵 埴谷文雄