月見ぬ夜更けての文(2)和泉式部日記を書いて

2.門をたたくのは
釈文:「目もさましてねたるに、夜やうやう更けぬらんかし、と思ふに、門を打ちたたく。あなおぼえな、と思へど、問はすれば、宮の御文なりけり。」

選字は「めも佐ましてね多る爾夜やうヽヽ 更希ぬら无可志と於もふ耳門乎う地多ヽ 具阿奈お本盈奈と思へ度登者須連八宮の 御文奈利希里」

鑑賞:「ねたるに」応永本では「ふしたる」。「あなおぼえな」「あな」軽い驚きを表す。「おぼえな」形容詞「おぼえなし」の語幹で、感動を表す語法。

寝付けずにいる夜に音がして、問えば待ち望んだ宮の御文だった。

参考文献:和泉式部日記 和泉式部集 野村精一校注 新潮社