行書般若心経-諸法空相(3)集字聖教序より
3.代表した「不」
釈文:「不垢不浄 不増不減」
書き下し文は「不垢不浄 不増不減なり」
鑑賞:一切のものは、不垢にして不浄であり、不増にして不減である。ここで「不」によって否定を表してる。『心経』はこの「不」によって、すべての「不」を代表させている。
対立するような語「垢・浄、増・減」を例示して、一気に否定する。現前のことがらに囚われる気持ち、執着する心から離れるにあたって、一息に脱落するに限る、というわけである。
肯定的なことばを用いれば、さらに迷いの道へと向かってしまうおそれがあるからである。
参考文献:般若心経講義 高神覚昇著 角川文庫